福岡県市民教育賞

一般社団法人 地域企業連合会 九州連携機構

教育者奨励賞 受賞

久留米市立 久留米養護学校 教諭 山田 俊之 氏

受賞した活動のきっかけ、また課題をどうとらえたか

 今から20数年前、担任をしていた小学校4年生のクラスで、よくキレる子どもA男の担任をしていました。そして、楽しいクラス作りを目的に、手拍子、おなか、ひざなどをリズミカルに打って合奏をする音楽活動を「ボディパーカッション」と名付け始めました。
 当時、A男は自己表現が苦手で、友達との些細なことからトラブルを起こし、衝動的に暴れたり、教室から飛び出したりしていました。授業中も注意散漫で物事を持続できない。現在であれば、発達障害(ADHD:注意欠陥多動性)に該当していたと思われます。
 ある日、給食準備中の放送で「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(モーツァルト作曲)の曲が流れてきました。今までは音楽の時間もほとんど興味を示さなかったA男が、その曲に合わせて手拍子で楽しそうにリズムを取っていました。笑顔も出ていつになく集中している様子が見られました。そこで、A男のように注意散漫で多動な児童にとって、手拍子を打ちリズムを刻むことは、感情の起伏を安定させ、集中力を付けるのに有効かも知れないと感じました。それをヒントに手拍子やひざ、おなかを叩いて楽しむリズム身体表現カツオ道「ボディパーカッション」が生まれました。

実行する上で苦労したこと、工夫したこと

 ボディパーカッション教育に取り組み始めて10年目、今度は障害児教育に取り入れたいと考え同じ市内の養護学校に転任しました。その時の生徒の主な症状は自閉症、ダウン症、脳性まひ、肢体不自由を含む重複障害等です。ある程度は想像はしていましたが、指導は簡単ではありませんでした。リズムの流れに乗って活動することが難しい生徒がほとんどです。脳性まひのため車いすに乗って、ほとんど動けない全面介助の生徒もいます。
 健常児の場合は、「演奏をして、見せる表現」があります、しかし、養護学校の場合は「見せるための表現」ではなく、「誰もが一緒に楽しむ表現」でなければならないと考えました。
 現在の学校教育現場では、さまざまな支援を必要とする子ども達が、ひとつの教室の中で共に学ぶ機会が増えています。2012年の文部科学省報告で小・中学校における発達障害の児童生徒は全国平均で6.5%以上在籍していると発表さています。
 具体的には、ADHD(注意散漫、教室から飛び出す)、自閉症(自己表現が苦手)、アスペルガー症候群(会話がかみ合わない、急に怒り出す)、LD(文字は読めないが会話は普通・・・学習障害)などの子どもたちです。簡単ではありませんでしたが、これらの児童生徒が一緒に楽しく取り組める教材として工夫を重ねてきました。

実行を通して波及した効果・影響

 平成15年に第1回市民教育賞を頂いた後、平成17年にボディパーカッションが小学校3年生音楽科教科書(教育出版)に掲載されました。その結果、全国の子どもたちが取り組むようになっています。
 また、市民教育賞受賞の際に発表させて頂いた養護、聾学校の実践研究は、その後も継続して活動を行い、演奏会ではNHK交響楽団と養護、聾学校の生徒が共演できました。
 その結果、福岡県アンビシャス賞(H19青少年健全育成)、NHK障害福祉賞最優秀賞(H21聾学校の取り組み)、読売教育賞最優秀賞「特別支援教育部門」(H23養護学校の取り組み)を受賞致しました。そして、平成24年度からは、ボディパーカッションが文部科学省編集特別支援教育用音楽科教科書に採用されています。
 これからは、リズム身体表現の楽しさを伝えるため、九州大学大学院で理論研究を行うと共に、九州大学芸術工学部で作成した「教則DVD:ボディパーカッション入門」(制作協力:脇山真治教授)を全国の特別支援学校や福祉施設へ無料配布計画しています。
 ボディパーカッション教育は「楽器や歌が苦手でも、楽譜が読めなくても、耳が聞こえなくても」、すべての子どもたちが楽しめる活動です。これからは、福岡発信の教育として世界中に広まること願って、研究や活動を続けていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

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久留米市立 久留米養護学校 教諭
山田 俊之 氏

生年:1954年、職業:久留米市立久留米特別支援学校教頭、専門分野:学校教育システム、特別支援教育、リズム身体表現学(ボディパーカッション教育)。九州大学大学院修了。
現在、九州大学大学院人間環境学府博士課程に在籍し「子どものコミュニケーション能力を高める」視点から、特別支援教育を含めたボディパーカッション教育の理論的な研究を行っている。平成15年福岡県市民教育賞、平成18年キワニス社会公益賞、平成21年NHK障害福祉賞最優秀、平成23年読売教育賞特別支援教育部門最優秀を受賞。